滝つぼにある、この深い淵には、おなんという若い下女の名前が付いています。おなんは、昔、この地域に住んでいた裕福な男のもとで奉公をしていました。おなんはとても働き者で、まじめな下女でしたが、ある日、主人がとても大事にしているお膳を誤って落とし、割ってしまいました。主人はひどく叱り、その後、おなんは恥じて崖から身投げをしました。言い伝えによると、地元の人は、ある一定の数のお膳を貸してくださいと書いた紙を滝に送ると、翌日には頼んだものと同じ数のお膳が下流に浮かび、使わせてくれることが分かりました。しかし、ある日、半分返さなかったことがあり、それ以来、頼みを聞いてもらえなくなりました。おなんのものと言われるお膳の1つが、東桂の宝鏡寺に保管されています。
おなん淵は鹿留川流域にあります。御正体山付近の水源から約6キロに渡って流れ、最後は桂川に合流しています。この淵からそれほど遠くない下流には、蒼竜峡があります。川の一部では、青い水が狭い火山の渓谷を曲がりくねって流れ、まるで青い竜のように見えます。
< この解説文は観光庁の地域観光資源の多言語解説整備支援事業で作成しました>